東京おさんぽ譚 第1話
写真と文:青山ジーナ
マノロブラニク。
なんて甘美な響きの靴なのでしょう。
繊細で力強くて、美しくて品があって、色気があって、すみずみまで手が込んでいる。
足を入れて立った瞬間、背筋が伸び、手の先まで力がみなぎる。
顔もひきしまって、眼力は3段階あがる。
(肌艶まで良くなった、と自分に言い聞かせる。)
「マノロ履く人は、こういう格好するものなのよ」と靴が勝手に説明してくれて、
どんな服を着ていても全てが正解になる。
仕事の合間に京橋エドグランの地下で珈琲を飲むときも(わたしは、ここの屋内なのに屋外風のテーブル席が好きである)、
マノロを履けば、気分はマンハッタンでタバコくゆらすキャリー・ブラッドショー。
履くだけで、美容・ファッション・ライフスタイルが満たされる、
こんな魔法があるなんて!
(だから値段なんてどうでもいい、と自分に言い聞かせる。)
今年の目標は、まだおろしてない眺める専用だった残りのマノロも全部履いて外に出ること。
「いつか」、なんて一生来ないぞ、わたし。