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珈琲屋台でよみがえる、暮らしと想い出

(前回のお話はこちら

昨年に続き、今年も被災古材の故郷・八代市坂本町を訪れた。
「珈琲屋台でよみがえる、暮らしと想い出」
雨時々曇りの予報だったが皆さんの願いが通じたのか時々晴れ間が覗き、おかげで5分咲きから満開になろうとする桜たちが迎えてくれた。
「 珈琲屋台でよみがえる、暮らしと思い出」
初めにご挨拶させていただいたのは、道の駅の駅長、道野さん。
この素敵なお名前でいつも掴みはバッチリだそう。道の駅を守る、坂本町の皆さまから愛される駅長さんだ。
「珈琲屋台でよみがえる、暮らしと想い出」
私たちを迎えてくれた満開の桜はそのまま河川敷へ、そして球磨川に繋がっていた。

実はこの河川敷では、数か月後に水害再発防止のため輪中と呼ばれる堤防が建てられることが決定していた。

工事に伴い、3月一杯で閉館になるさかもと館は隣の敷地一角に移転、その後建物は取り壊されることも決まっていた。
「 珈琲屋台でよみがえる、暮らしと思い出」
皆さんの想い出がたくさん残るこの建物も、美しい桜の木も全て無くなってしまう。この風景の中での珈琲屋台の出店はこれが最後。

ささやかながら、さかもと館にいらっしゃる方々や復興工事関係で頑張ってらっしゃる方々にふるまい珈琲をさせていただいた。
時に降る小雨がアスファルトを濡らす匂いと焙煎された珈琲のいい香り、そして珈琲片手にお話しする皆さんの姿がとても印象に残っている。

お兄ちゃんと妹「珈琲屋台でよみがえる、暮らしと想い出」

さかもと館で2人の兄弟に出会った。小学生の妹と、中学生のお兄ちゃんの兄弟だ。

初めはRRチームのスタッフが話しかけても人見知りをしていた2人だったが、心を許してくれたのか気づけばカメラに向かって笑顔でポーズを撮ったり、最近学校であった話をしてくれた。

二人は近くに住んでいてさかもと館にもよく来ているそうだ。

話をする中でと妹ちゃんがポロッと「ここの道の駅、もうなくなっちゃうんだよね。」と切なそうに話す。幼いころからいつも近くにあって、そこに行けば町の方に会える空間がなくなってしまう、それは彼女たちや町の方にとってとてもつらいことである。

私たちは珈琲をふるまうことしかできないけれど、来てくださった方たちに「今日さかもと館でみんなで珈琲を片手にお話して、楽しい一日だった。」と少しでも心に残ってくれたら嬉しいなと思った。

カメラマンのおじいちゃん「珈琲屋台でよみがえる、暮らしと想い出」

途中大きな一眼カメラを持って1人のおじいちゃんが来てくださった。

どんな写真を撮っているんですか?と話しかけると、撮っている写真を見せてくださった。

後から溝口さん に聞いたところ、熊本豪雨でカメラが流されてしまい最近は写真を撮っていなかったそう。久しぶりにカメラを持ち撮った写真を私たちに見せてくださるその姿はとても嬉しそうで、胸が熱くなった。

「珈琲屋台でよみがえる、暮らしと想い出」

珈琲屋台に再生した被災家屋。そこで暮らした思い出との再会

最後に溝口さんが岡田さんという女性を連れてきてくださった。とても可愛らしいチャーミングなおばあちゃんだ。
「 珈琲屋台でよみがえる、暮らしと思い出」
なんとその女性は、珈琲屋台の内装を飾る被災古材の元の持ち主だった。持ち主の方とお会いするのはこれが初めて。なんて嬉しいサプライズだろう、溝口さんのお気持ちや岡田さんと出逢えた喜びに胸がいっぱいになった。
「珈琲屋台でよみがえる、暮らしと想い出」
岡田さんは珈琲屋台に入ると「うちの玄関にあった戸棚だわ!」とすぐに古材に気がついて笑顔を見せた。「毎日使っていたからすぐにわかったわ!」と、当時を思い出しとても嬉しそうに話してくださる。

お話を聞くと、
戸棚はお父さんの書類や、岡田さんの学校のものを置いていて毎日のように使っていた身近なものだったそう。嬉しそうに戸棚を撫でる岡田さんの目には涙があふれた。

岡田さんのご実家は、岡田さんのお父様が戦後に建てられたお家。
お家の中は、欄間など細かいところにもこだわりが詰まっていて当時では珍しい2階建てのお家。お父様はそんな家に家族と住むことがずっと夢だったという。

岡田さんに、もしよろしければ戸棚にメッセージをいただきたいとペンをお渡しすると
迷いなく「坂本のために生きた人、人のために生きた人。」、そしてお父様のお名前と、ご自分のお名前を力強く書かれた。

「父の建てた家が全て瓦礫となり、なくなってしまったことは本当に悲しい。だから、こうして少しでも形として残っていることが嬉しい。綺麗に使ってくださってありがとう。」と岡田さんは涙ながらに話した。
「珈琲屋台でよみがえる、暮らしと想い出」
現地に行く前は、わたしたちにできることは本当にあるのだろうか。なんと言葉を伝えたらいいのだろうか。と思っていた。被災古材に詰まったたくさんの想いや、被災された方の本当のつらさは当事者にしかわからない。
それでも、その時その場所で同じ気持ちになれたり「今日はたのしかったな」と思っていただけたら私たちがここに来た意味はあるのかなと思った。

RRは、ささやかな復興応援活動として、22年・23年と熊本地震・熊本豪雨の被災地を訪問しました。準備段階や活動後のフォローアップも含めて沢山の方々にサポートいただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。紙面の都合上、記事の形でお伝えできなかった方々や、訪問させていただいた場所は<Special Thanks>ページにてご紹介しております。

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